経営学高校野球を組み合わせたビジネス本風の小説「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」(もしドラ)を読んでみた。組織や企業のあり方、マネジメントの仕事、役割、使命など組織運営の全般を解説するピーター・ドラッカーの名著「マネジメント」から、人材活用やマーケティングなどを学び、野球部で実践しながら、甲子園を目指すという物語である。
 個人的な感想になるが、マネジメントの基本に触れるという意味では確かに売れるだろうなという印象の本である。また、自分自身で仕事や人生における方向性等を探っている人にとっては考えの整理に使えそうな内容の本である。なにより常日頃から、物事を野球に置き換えて考えがちな自分にとっては、とてもタイムリーな例えであった。
 但し、ケチを付けたくなる点が一点ある。作中において、「ノーバント」・「ノーボール」というチーム方針が挙げられている点である。特に「ノーバント」については納得がいかない。打高投低になりがちな現在の野球において、みすみすアウトを1つ献上するのは勿体ないという理屈から挙げられた方針である。しかし、攻撃的2番打者なんぞ存在しなかった時代に、高校・大学とずっと2番打者を張ってきた自分にしてみれば、バントを蔑ろにされるのは気分の良いものではない。
 小説であるし、また、そもそもの趣旨が違うということも十分分かってはいるが、今後の野球人生において、バントやバスターヒッティングに活路を見出そうとしている長男の為にも言っておく。中盤や終盤の大事な局面において最も攻撃的で勇気のいる戦法は「送りバント」や「スクイズバント」である。良い投手を切り崩す為の打開策の一つが「セーフティーバント」である。3割打てる打者も良いが、10割バントを決められる打者もまた良い打者である。一般的には地味でつまらない戦法かもしれないが、バントが確実に出来る選手の攻撃バリエーションは「打つだけ」の人より幅広いということを強調しておきたい。