成年後見制度に関する選挙権喪失について。
 後見開始の審判が下ると、選挙権の剥奪にまで及ぶ公選法の規定は憲法違反だとして、知的障害を理由に被後見人となった女性が昨日、国を相手取り、選挙権を認めるよう求める訴訟を東京地裁に起こしたとのこと。
 成年後見制度そのものが、どちらかと言えば認知症の高齢者の権利を擁護する為の制度になりかかっていること問題があると感じている。判断能力が一般的な人に比べ、「劣る」とされる部分があったとしても、それが高齢者なのか、若年者なのか、認知症による欠落・欠損なのか、精神障害による停止・停滞・退化なのか、知的障害による未発達なのか、それによって、現在持っている能力がそれぞれに異なるはず。一方に偏りがちな制度設計であるからこそ生じた問題であり、それが今回のこの訴訟に繋がったのではないだろうか。
 そもそも民事上での行為を行使するだけの能力が有るかどうかに基づき下される審判が、そのまま公的権利の制限にまで繋がっていくこと自体、原則としておかしいのかもしれない。(後見開始の審判が下った時点で、)全て一律といった基準にて、自動的に選挙権を剥奪されるというならば、やはりそれは訴訟を起こした方の言い分が正しいということになるだろう。
 ただ、その人(被後見人)の個別的日常までをもはかることは本当に難しく、これを認めてしまうと今後の制度運用に(審判が下るまでの日数や費用に)大きな変化が出てしまうことも予想される。なるべく個人の権利を擁護しつつ、且つ、被後見人の権利が悪用されたりしないような仕組み。言うのは簡単だが、探ってみると実に難しい問題である。
 大多数の人が現政権のマニフェストを信用し、世論に流され、実際に投票したということの方が、実は、大きな問題なのかもしれない。