厚生労働省が行った調査において、最低賃金で働いて得られる賃金よりも生活保護での収入が多い「逆転現象」が12都道府県で起きているという調査結果が出たとのこと。最低賃金法において、生活保護を上回る水準に賃金を引き上げるよう定られているらしいが、家賃値上がりなどを背景に保護費の支給が上昇する傾向にあるため、逆転現象はなかなか解消に向かわないという背景があるよう。
 生活保護を含む社会保障の問題がクローズアップされる度、批判の矛先が制度そのものへ向かってしまう傾向がある。先日起こった中国残留孤児姉妹に関する(生活保護費)不正受給疑いの件しかり、今回の件しかり。働かない人と働けない人の区別ぐらいは確かにきっちりと行うべきだろうが、これだけ左に傾いた社会においては、その線引きさえも批判の対象となってしまう恐れがある。一介のケースワーカーがその批判の矢面に立たねばならないことになるのは目に見えている。
 ならば、少し視点を変えてみる必要があるのではないか。最低賃金の問題において、経済界に全く不備がなかった訳でもないだろう。下請け企業の在り方を抜本的に見直すべき時期が来ているのではないだろうか。海外で低賃金の下請けをさせ大企業が潤ったとしても、日本の経済は潤うとは限らない。産業構造全体を出来る限り国内に留めておくことが出来ていれば、少なくともワーキングプア等という意味の分からない言葉が聞かれることもなかったのではないか。中小企業経営者の自殺率の高さ、高度な産業技術の海外流出、最低限度の生活保護費よりも安い賃金労働。日本経済を牽引する大企業、そして経済界は、このような日本社会の問題を解消すべき義務があるはず。
 現政府もばら撒きや社会主義的制度政策ばかり考えるのではなく、きちんとした税収計画と法整備を急ぐべきだろう。小手先の調整に走り、生活保護費を引き下げて相対的な目くらましをしたとしても、根本的な解決にはならない。生活保護が裕福に感じてしまう社会は、間違いなく狂っている。