昨日の事だったか、大手百貨店で、外商を担当する男性社員が、認知症の疑いがあった87歳の女性に対し、約7000万円程度の貴金属や絵画などを販売していたという記事を見かけた。
 女性は10年程前より1人暮らしで、貴金属や絵画等を購入した2008年頃には既に認知症の症状が出ていたらしいとのこと。購入品の大半はクレジットカードで決済し、口座残高がなくなると、男性社員の付き添いのもと、銀行に出向き、別の口座からお金を移し入金していたという。
 この件に対し、人それぞれいろんな考え方はあると思うが、この問題は単に大手百貨店の男性社員が悪いという問題ではないような気がする。表面化することは滅多にないと思うが、これは、親子間・親族間でも大いに起こり得る問題であろう。我々は、医療・福祉に携わる立場として、アセスメントや経験で以て、認知面での問題を認識することや、認知症を疑われる方に対する応対や対処について考えることは出来る。しかし、一般の方が其処まで認知症に対する知識を備えているとは言い難い。まして、対外的な会話が出来る方や対面的な交流が図れる認知症の方々等は特に判断が難しい。古くから付き合いがある顔見知りの者ならば尚更にその判断が難しい場合もあるだろう。
 大手百貨店を叩きたいだけの記事なのか、認知という問題を社会に提言したいという意向の記事なのか、意図するところは良く分からないが、認知症を持った高齢者の増加が見込まれる社会において、近い将来、事の大小に関わらず誰にでも起こり得る問題になっていることだけは予想できる。クーリングオフ制度、消費者センター、成年後見制度等、権利を守る為に活用できるものは多くあるが、その時になって、果たしてこれらの事が咄嗟に思いつくものかどうかは疑問である。その辺りのことも踏まえて記事にしてくれると、本当に良い啓発になるのだが・・・。