月曜日、黒部市が新潟から飛来した雌のトキに「トキメキ」と命名し、特別住民票を交付したのに続き、昨日、佐渡市が放鳥した10羽すべてのトキに「戸籍謄本」を作成したとのことである。黒部市に滞在しているトキは、本籍が新潟県佐渡市で、現住所が富山県黒部市ということになる。このトキは黒部市から定額給付金を貰うことになるのだろう。トキそのものはあまり渡りをする鳥ではないらしいので、このまま暫くは黒部市に滞在していることになると思う。しかし、もし仮に、魚津市に渡り、暫く滞在することになったとしたら、住民票も移転することになるのか。
 それは置いておくとして、本題はここからである。素直にほのぼのとしたニュースと捉えれば特別問題もない話だが、個人的にそう考えることも出来ない一面もある。特別住民票の交付対象が何処かと同様に流れアザラシ等なら何とも思わないが、交付対象が国際保護鳥のトキである。その事を考えると地元住民の受けを狙った安易なパフォーマンスはしない方が良かったのではないかと思う。トキに特別住民票を交付するという事実を以て、トキの保護活動に対し、黒部市として、それなりの覚悟と責任を問われるような事が起こった場合、どのような対処をしていくのか疑問である。
 湿地を主とした環境に身を置く鳥なら、周囲に湿地を主とした環境を作ってやらなければならないし、生態と農業環境が大きく関わっていると言われるなら、その部分へのアプローチも検討が必要になるだろう。そして何より1羽ならば、繁殖という事は絶対に叶わないものであるので、繁殖を行う為に人の手で捕獲し、保護センターへ移送ということもやがて求められるかもしれない。
 人に対しても動物に対しても保護とは、ある程度の公金の投入を行って始めて成り立つものであると考えられる。それが国際的にも保護鳥として指定されるものなら尚更の事であろう。行政が関われば、必ず何処かで行政が何とか対応するだろうという機運が高まる。もうじき農薬散布の時期がやってくる。この問題一つをとっても、人の営みを優先させるのか、トキの保護を優先するのか、誰もが行政の手腕に期待を寄せることになるだろう。
 それが出来ないようなら・・・。
 話は変わるが、長男が通う小学校には、毎朝、校長先生と並び校門で児童を迎える野良猫がいるという。その野良猫が役にたっているのかどうかは分からないが、少なくとも野良猫は何らかの役割意識を持っているように思われる。一時の賑わいでトキに特別住民票を交付するぐらいなら、毎朝、校門で校長先生と共に児童を迎える野良猫にも特別住民票を与えてやってはどうかと思う。