昨日の厚生労働省の発表によると、職場でのストレスが原因でうつ病などの精神疾患になったとして、2008年度に労災認定を受けた人が269人いるとのこと。3年連続で過去最悪を更新しており、30代(74人)、20代(70人)、40代(69人)の順で若年層の認定が多いとのことである。厚生労働省は「非正規雇用が多いなど、安定しない経済情勢が影響しているのだろう。」と分析しているようである。
 21年度4月において、就労可能な人口数(15歳から64歳まで)は、概ね8,100万人程度であった。学生を含む就労人口であるので、実数にすると6,300万程度の方が就労しているとされている。就労者6,300万人に対し、労災認定を受けた人の数269人という数字は明らかに少なすぎる数字だろう思う。実際にうつ病等を発症しているにも関わらず、医療機関に掛かっていない人もいるだろう。更に自覚がない患者や、予備軍を含めれば、相当数に上るものだと思われる。生きていく為に働いているのに、働くことで生きる気力を失ったりする現状は良くないだろう。
 アメリカの成果主義裁量労働に則り、合理化・効率化が図られる一方で、労働者の「孤立」が増長していった。さらに自由主義社会の形成により、労働社会を含む日本社会のモラル崩壊に繋がった。欧米諸国に倣った制度政策の導入が、相互扶助という日本独特の優れた思想を失わせ、このような現状を引き起こしたのかもしれない。数年前、「改革」という言葉に大多数の国民が安易に乗ってしまった。結果として「改革」の恩恵を受けることなく、今も痛みと負担だけが残っている。今にして思えば、あれがそもそもの間違いだったのではないだろうか。
 このような不況が続くような状況であれば、恐らく来年もうつ病等の精神疾患にて労災認定を受ける人の数が過去最悪を更新することになるだろう。厚生労働省は企業に対する指導の徹底やメンタルヘルス対策の支援強化を図るという意思を示している。そのようなことで疾患の発症を抑え込むことも大事だと思うが、現状に対する処置だけでは物事の改善は図れないだろう。疾患の発症となっている原因を追究し、その部分にメスを入れていく等の変革も時には必要なのではないかと思う。