5年に1度予定している財政検証の一環として、厚生年金受給額についての試算を厚生労働省がまたまた行ったようである。
 試算結果によると、妻が専業主婦のモデル世帯では、政府与党のいう公約(現役世代の5割確保)が2050年度時点で辛うじて達成できるものの、それ以外の世帯はすべて5割を切り、共働きや男性単身世帯では4割を下回るに至ったという。更に、いったん受給が始まった年金の実質価値が次第に低下し、現在65歳のモデル世帯の場合、10年後には月18,000円も目減りすることがわかったとのこと。
 保険料財源による世代間扶助の考えは、年金制度発足当時にあった考え方の一つとして、確かに間違った方向性ではなかったのだろうと思う。50年後や60年後の社会情勢(人の営み)を見越して、安心できる社会保障制度を形成しようというのは、なかなか難しい話だと思う。そのような事からも試算のたびに批判を浴びる官僚や政府与党の方々には、多少同情できる部分もある。一番の問題点は、何にしても、時代に沿わないと理解している部分を延々と引っ張り続けたことだろう。日本社会をリードしていく方々に失敗を認める潔さや柔軟さがあれば良かっただけの話である。
 年金に関して言えば、少子高齢がクローズアップされてきた頃に、有効な策を打ち出しておくべきだったと思う。少子高齢社会において、世代間扶助の考え方を貫くのは、誰が見たって無理がある。その考えを貫けば、どうしても需給年齢の引き上げ、若しくは給付金額の引き下げに辿り着く。そしてその先にあるのは、年金財政の破錠である。
 何時かのブログでも述べたが、年金保険は保険料財源を撤廃し、税負担方式にシフトチェンジを図るべきだと思う。将来のものを現在に徴収しようとする為、いろいろな問題が発生するのであって、現在のものを現在に徴収するのであれば、年金が消えたり、着服されたり、受給額が目減りしたりといった問題は起こらないだろう。
 払ったはずなのに貰えない詐欺には遭いたくない。