昨年5月、プロ野球の試合を観戦中にファウルボールが右目に当たり、失明寸前の大けがを負ったとして、男性が昨日、球場を所有する県と球団を運営する球団に対し、約4400万円の損害賠償を求める訴えを地裁に起こしたとのこと。
 詳細については不明であるが、なんでも男性側は「座った席の前にネットがなかった。球団は観客の安全を最大限、確保すべきだ」と主張し、防球ネットなどの設置を怠ったことを争点とし、損害賠償を求めていくという方向性らしい。
 観戦者にとって、硬式ボールは正に飛んでくる凶器である。硬式ボールに触れたことのない人には分からないかもしれないが、体を直撃した時の痛さは、本当に悶絶ものである。大学時代にピッチャーライナーを受け損なって右膝に直撃した事があった。その時なんかは大袈裟かもしれないが、膝蓋骨が粉々になったのではないかと思ってしまう程の痛みで、20分間程立って歩くことが出来なかった。幸い、骨には何の異常もなく、ただの打撲で済んだが、翌日は膝が腫れ上がり大変だった。
 なので、この男性が大怪我を負い、損害賠償を求める訴えを起こしたという気持ちは理解出来ないでもない。しかし、野球をしていた者の意見として言わせてもらうならば、完全に「自己責任」の一言であろう。野球場では、野球をする者はもちろん、観戦するものも決してボールから目を切ってはいけない。インプレー中にグラウンドから目を離せば、次にどんな危険があるのかをある程度予測しておくべきだろう。恐らくそれらの注意を喚起する意味で、ファールボールに対する注意を再三再四促しているはずである。
 もし、これで男性の訴えが通るなら、最近はやりのエキサイティングシート等は論外のものとなる。折角、メジャーの球場のように選手と観客が近い距離で接することが出来ると言う方向で進みつつある試みが、この訴えの行方により台無しとなってしまう。訴訟するのは本人の自由であるが、その一方で万人の楽しみが失われてしまうというリスクも考慮してもらいたい。