昨年に確認された高齢者虐待の数値が、一昨年よりも約700件増加し、1万3300件となったそうである。厚労省は、この数値を高齢者虐待防止法の理解が進んだ結果と分析しているようだ。その一方で対応策についての具体的な記述がないことが気になった。

 虐待の種別(複数回答)
「暴力など身体的虐待」63%
「暴言など心理的虐待」38%
「食事を与えないなど介護放棄」28%
「財産を勝手に処分するなどの経済的虐待」25%
 
 高齢者が死亡したケース27件
 死亡原因、殺人13件、介護放棄による致死7件、心中4件、他3件。

 全体の被害者の7割が、介護が必要という認定を受けた人。
 虐待をしているのは息子40%、夫15%で娘、嫁、妻と続く。

 施設側が加害者となった虐待379件(前年比106件増)

 これは、各市町村に寄せられた通報や相談を基にした調査である為、潜在的な虐待はもっと多いものと思われる。ただ思うにこの高齢者虐待の問題は、福祉及び行政介入のシステムを構築したからと言って直ぐ片付く(数値が減少する)問題ではないような気がする。高齢者医療、介護等の制度的側面はもちろんの事、核家族、地域コミュニティーの脆弱、離婚増加、所得格差等々、社会全体の歪みから派生した身近な生活の問題であると思っている。その為、厚労省だけで対応を図ることはもはや出来ないだろう。
 重層的、多角的アプローチを行い、この問題の根底から検討していく必要があるはず。