「社会福祉士が利用者の遺産相続」
 昨日の報道によれば、85歳になる女性に対し、女性社会福祉士が、公正証書による遺言状を作成させ、自らが遺言執行人となった。その後、85歳の女性が死亡し、遺産の一部を個人として受領したとのことである。
 遺言に関する女性社会福祉士の行為は、社会福祉士会の定める行動規範/倫理綱領を大きく踏み外す行為であり、戒告等の厳しい処分も仕方ないことである。
 しかし、これは社会福祉士が職能団体として後見人業務を請け負うことが(専門の研修課程を積んだ上で)できるとされた時から、いずれ起こるだろうと予想できた事項である。このようなケースにおける対処法を整備し周知させていたかどうかという社会福祉士会の監督責任も追及されるものと思われる。
 女性社会福祉士が誘導した作為的な遺言状の作成か、85歳女性の本心からの遺言状の作成か、どちらかは分らないが、一つ言えることは、女性社会福祉士が、親族よりも確実に近い位置に居たということである。恐らくは、家族が持つ役割を一生懸命に代行していたことであろう。そうでなければ、遺言状に意思を残せるぐらい能力のある人から、「あなたに任せます」という言葉を結果として引き出すことはできないはずである。
 遺産を懐に入れてしまったことは確かにいただけない行為であるが、どれだけ多くの福祉専門職が、家族より近い位置で一生懸命頑張っているか、多くの方に考えてもらいたい。普段の世話は全くしないが、残していったものだけしっかり頂きますという状況では、やはり遣り切れないだろう。