欠損家族/家族の機能障害
 この仕事に就いて、長いこと経つが、最近特にこの問題が絡んだケースに悩まされる。無意図的別離が多いのか意図的別離が多いのか、正確なことは分らない。しかし母子家庭/父子家庭が確実に増えており、その欠損の穴埋めを祖父母が行っていたという現状が確率としてあるのだろう。その祖父母が、病気なり怪我なりで入院してしまうと、今まで相互補完的にこなしていた役割のバランスが崩れ、家族としての機能を失ってしまう。若しくは低下してしまうことになる。家族成員間の緊張・葛藤をうまく回避し、結合(一致団結)する力が増せばよい方向に向かうのだが、うまく回避できないと家族解体に向かうことになる。
 今、力を注がなければならないケースがこの状態である。入院前面接、入院時面接、そして先月。面接を重ね、その都度、家族の言葉に危うさを感じながらも「家に連れて帰りたい」という家族の言葉を信じてみた。ところが、具体的に話を詰めたいと切り出した瞬間に、「やっぱり、連れて帰れない」という言葉・・・。
ある程度は予想出来ていた。
父子家庭、女手がなく、ようやく家族役割の再構築が出来つつある状態に、介護が必要な母親が入ると、その家庭はどうなるのか・・・。
早い段階で、無理なら無理と言えるよう誘導すればよかったのか。それともストレートに「お宅では、無理でしょ」と言ってあげればよかったのか。家族に対する分析は出来ていたのに、活かすことが出来なかった。この家族は、過去、そして今回の言葉に責任を持てるような状態にないことも・・・。
 この発言以降、家族の行動に少し期待してみたのだが、自ら受入先を探しているような気配はない。
 最後の最後で捲られることには慣れているが、回復期という特殊な病棟だけにこちらの精神的ダメージは比較的大きい。退院時期も迫っているだけに次の手を早急に考えなくてはならない。